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読み物人と犬の幸せな暮らしのあり方

DOGGARDEN盛岡 代表上野祐輔さん

人はなぜ犬と暮らすのか?

●犬は人間がこれまでの長い歴史の中で最初に家畜化した動物であることが解っている。
(個人的に家畜という言葉が苦手ですが学術的な説明のために)
その時代の人間達は主に、外敵の接近を吠えることで知らせること、羊等の家畜を管理・守ること、狩りのサポートを犬に求めていたと考えられる。つまり暮らしにおいて必須の役割を担っている部分があったということである。

私はふとなぜ現代人は犬と暮らしているのだろう?と考えることがある。
まずはここを本質的に考えていく必要があるのではないかと思った。
犬を迎えた理由とその犬に何を求めているのかを身近な飼い主さんに聞いてみた。

犬を迎えた理由 犬に求めること
昔から犬が好きだったから 側に居てくれれば十分
一人暮らしが寂しかったから なでなで・抱っこ・一緒に寝たい・話相手
子供、夫が欲しがったから ボール投げ・追いかけっこ・フリスビーとってこい・かくれんぼ・お散歩
好きな俳優さんがその犬と暮らしていたから 車に乗せてドライブ・バーベキュー・登山・サップボード・ドッグカフェで優雅にお茶
映画、アニメを観て憧れた とにかく行動をともにしたい!
保護されている犬達を幸せにしてあげたくて 側に居てくれれば十分
癒しが欲しかったから くっついていて欲しい
安心した寝顔を見ながらお酒を飲みたい
友達の家の犬と触れ合って好きになった 引っ張りっこ・追いかけっこ・芸を沢山やってほしい
めちゃくちゃ可愛いから 一緒に買い物したい!
看板犬として欲しかった 来客にフレンドリーにご挨拶して欲しい
芸ができて欲しい
セラピードッグとして まったり側に寄り添ってほしい・吠えないこと
先住犬の友達として 先住犬と仲良く遊んで欲しい!

※できるだけ飼い主さんの言葉そのままに載せています。
上記以外にも沢山挙げて頂きましたが特に多かったもの、特徴的な理由でまとめました。
世の中には先に犬を迎えていた方の何らかの事情で犬と暮らすことになった方、プレゼントという形で犬との暮らしが始まった方もいらっしゃると思いますが、今回は犬を迎えよう!という自発的な意思があって迎えた方を考察の対象とさせて頂きました。

結果から考えられることは、少なくとも私の周囲で犬と暮らしている方の多くが犬達を家畜化し生活に『利用』することの多かった昔の人間達に比べ、寄り添い『共生』することを本質的に求めているのではないかということである。昔の人間達も犬達と共生することに喜びを感じていたとは思うが現代は犬目線での幸せを考える福祉的な考え方がより普及し『共生』という考えが広まり、深まっているのを感じる。

いずれにしても犬達に私達が求めていることを伝えていくことが大切である。犬達に伝えたい物事は【人間社会は怖くないこと】【社会を安全に暮らす術】の2点と考えている。

上記の表にある【犬に求めること】を満たすために教えなくてはいけないことをトレーナー目線で考えると下記の通りになる。

■感情面(社会化)

老若男女・走る人・正面から近づいてくる人・後方から近づいてくる人・手を伸ばしてくる人・話しかけてくる人・目を合わせてくる人・立ち止まっている人・服装様々・部屋に入ってくる人・手・抱っこ
小型・中型・大型・走っている犬・正面から近づいてくる犬・後方から近づいてくる犬・吠えている犬
車・トラック・自転車・バイク、ボール・フリスビー・首輪・ハーネス・リード・テント・煙・火・ライフジャケット・サップボード・カート・スリング・リュック・服・バギー
金属音・犬の吠え声・エンジン音・他人の話し声・人の足音・犬の足音・店内放送・インターホン・鳥の鳴き声・犬具装着音・その他その環境にある音
匂い
煙・その他その環境にある匂い
足場
砂利・砂浜・枝や落ち葉の多い足場・濡れた足場・段差・網・テントの床・サップボード・バギーの床・不安定な床・その他その環境にある足場
環境
車内・クレート・テント・山・湖・川・店内・キャンプ場・ドッグカフェ

※社会化のGOALは各刺激が与えられても普段通り落ち着いていることと考える。私の場合『落ち着いている』とは普段自宅で食べている食べ物を『普段通りの食いつきで』、『その場で食べる』ことができて、『おかわりを欲しがっている』ことと考える。

※社会化のGOALは各刺激が与えられても普段通り落ち着いていることと考える。私の場合『落ち着いている』とは普段自宅で食べている食べ物を『普段通りの食いつきで』、『その場で食べる』ことができて、『おかわりを欲しがっている』ことと考える。

■行動面

・呼び戻しの合図、又は人が手を伸ばしたら自発的に近づき首輪を掴まれることを受け入れる。
・人が手を伸ばしたら自発的に近づき抱き上げられることを受け入れる。
・人が膝を叩くと自発的に膝に4つ足を乗せる。そのまま抱き上げられることを受け入れる。
・人が離れても落ち着いている。又は作業(コング・ガムを噛む・オモチャ遊び等)ができる。
・カート・バギー・スリング・車に乗せられることが分かっていて自発的に抱っこされる。
・自発的にクレートに入る。
・自発的にサップボードに乗る。
・テントの中に自発的に入る。
・他人に自発的に近づき4つ足で立つ。座る。伏せる。その姿勢のまま落ち着いて食べ物を食べる。
・他人や他犬・車等の刺激の近くでも人の横をリードを緩めて歩く。
・気になるものが落ちていても人の横を歩く。
・首輪やハーネス・服・ライフジャケットの輪に自発的に頭を入れることができる。
・首輪やハーネス・服・ライフジャケットの装着中4つ足で立ち装着を落ち着いて受け入れることができる。
・人の合図で排泄ができる。
・人の合図でボール・フリスビーを咥え、人の合図で手に返す。
・マットの上で伏せる
・希望のトリック(オテ・オカワリ・スピン・リバース・アラウンド・ウィーブ・バックアラウンド・ジャンプ・バック・ロールオーバー等々)

まだまだ細分化すれば沢山のことが課題になります。ざっくりと上記のことができるように伝え、導いていく必要があります。中には犬自身が身に着けるスキルもありますが、大部分は私達飼い主の役目なのです。

『自発的に』という言い回しが多い理由として、犬達の幸せを考えるのであれば犬自身が望み、喜び、楽しみ行動することが大切であると考えているからです。

人が望む行動以外を取れないような環境を作ったり、強制的な関わりを持って無理やりその行動を取らせても表面上はできているように見えてしまいますが、私が大切にしたいのは感情面なのです。仕方なく、罰を避けるために人間の望みに応える生活ほど悲しいものはないかと思うのです。

大切なことがもう一つ。犬に何かを伝え、求める前に犬達のニーズを満たす環境、関わりを作るということ!私は人と犬は『対等な関係』であると考えています。なんなら犬の能力を学ぶほどに犬の方が優れている部分が多いと感じます。犬達の欲求を全く満たしていないのに人の要求を求めるというのはフェアな関わりではないと感じます。まずは犬達の欲求充足から始めましょう!5つの自由という私が大切にしている幸せな暮らしの基礎があります。是非調べて頂ければと思います。

そして犬達の健康のことを考えるとケアについても触れなければなりせん。人側の犬を迎えた理由、犬に求めることの中に犬達の暮らしの中で最も大切なケアについての記述がないのです。つまり犬を迎えた多くの方のやりたいこと教えたいことリストにお手入れが入っていないということになります。お手入れ行為自体に楽しみが見出せないことや、多くの犬達がお手入れを嫌がるからなのでしょう。しかし、所謂ケアは暮らしの中で必須であると考えます。ブラシをかけられなければ毛玉になり、放置するとフェルトになり皮膚を引っ張ります。

爪を切らなければ伸びた爪が巻き爪になり肉球に刺さります。これだけでも犬達はケアができないと大幅にQ O Lを下げてしまうのです。体を触られること自体に抵抗のある犬達は適切な医療行為を受けることが困難になってしまうケースも多くありません。つまり幸せな暮らしの土台となる犬達の心身の健康を築く上でケアは全ての飼い主さんに練習して頂きたいことなのです。

私達飼い主側に求められることはたくさんありますね。では次は犬達目線でどんな飼い主さんが理想なのかを考えていきましょう。私は直接お話を聞くことが出いませんのであくまで独断と偏見です(笑)

犬達にとって理想の飼い主とは?

なぜ犬と暮らすのか?でも述べさせて頂いたように犬達は自発的に人間の生活圏に寄ってきた動物であるということがこのテーマを考えるベースになります。私達の生活圏に入ってきた多くの理由は『生きるため』でしょう。食糧の確保、安全(外的に狙われにくくなること)、場合によっては雨風を凌ぐことができて、人と触れ合うことができたかもしれません。人と暮らすことで多くのメリットを獲得してきたことは間違いないかと思います。ただ、このメリットを獲得できる上でもっと大切なのは『危険性がない』ことだと考えます。安心で安全であることが最優先であるということです。

私達が犬達と結びたい関係性は『信頼関係』です。では何をすることで信頼は生まれるのでしょう?私は『嫌がることをしない』という関わりができれば信頼関係は築けると感じています。別の言い方をすれば犬達が出すほんの少しの嫌がるサインでその関わりをやめてあげる。

このお仕事をしていると愛犬に咬まれてしまうという相談を受けることも少なくありません。多くの場合犬達に対して飼い主側が何かをしようとしたときにその何かをやめて欲しくて咬む行動をとっています。ではこういった犬達は最初から咬むことで「やめて」と伝えていたのでしょうか?ほとんどの場合咬むという行動の前に、顔をそらす、舌舐めずり、白目が出る、身を引く、逃げる等の行動を使ってきたはずです。しかしそれらの行動をとっても飼い主が距離を詰めて無理矢理関わりを継続しようとすることがあるのが現実。そこで犬達は顔をそらす、舌舐めずり程度の『小声』では人に意思は伝わらない。唸って、咬む『大声』を使わないと意思は伝わらないと学習するのです。このような暮らしをしている犬達は幸せといえるかというと…はい。

攻撃行動でご相談にいらっしゃった飼い主さんにはまず最初に『その犬が攻撃行動をとる原因になっていることを止める』という提案をさせて頂きます。触ろうとすると咬むというのであれば触らない。抱っこしようとすると咬むというのであれば抱っこをしない。といった提案です。他にも各種トレーニングにも取り組んで頂きますが。この生活を続けていくと少しずつ犬達と飼い主さんの距離が近くなってくるのです。今までは近寄ってきても手が届かない距離で止まっていたり、飼い主さんが近寄った分離れていた犬達がその場で止まっている様子が増えます。こういったケースから犬達は危険性を感じなければまた人に寄り添おうとするということが分かります。この段階から改善に向けたトレーニングが開始となります。

お話が長くなってしまいましたが結論です!何を皆さんに伝えたいのかと言いますと、生きていく上で必要な資源を人間と暮らすことで手に入れることができて、安心、安全であればある程度の信頼関係を築くことができるということです。

逆を言えば何度おやつを与えて、何度楽しい遊びを提供して、楽しいお出かけをしようともたった1回の嫌なことを与えてしまうと信頼関係は崩れていくということです。

今まで沢山の飼い主さんとお話をさせて頂く中で良く耳にした「うちの夫がポチと仲良くなろうとしてオヤツ沢山あげるんです。でも帰ってくれば吠えられるし、抱っこしようとすると唸られるんです。」という会話。本当によく聞きます(笑)パパさんは日常的にオヤツを沢山あげていることで信頼関係を築こうとしていたのですが、実際には酔って寝ているポチくんを撫で、急に抱っこをするということが繰り返されていた訳です。

1000回の楽しいことの提供より1回の嫌なことを止めることの方が大切ということです。それも犬達の『小声』に気づいてすぐに応えることが大切ですね。

苦手なことは犬達が受け入れられる刺激の強さに弱めて少しずつ慣らす練習をして改善していきましょう!ここは専門的なお話になってしまうのでお近くのプロに相談ですね。

こんなお約束を守った上で楽しいことを沢山提供してあげましょう!

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